研究室ホームページ Jfly Flybrain 色覚バリアフリー
トップ
 
研究紹介
バックグラウンド
ギャラリー
アクセス
Jfly ホームページ
Jfly
ショウジョウバエ研究者を対象にしたデータベース
Jfly メーリングリスト

ショウジョウバエ研究者の情報交換と議論のためのメーリングリスト
Flybrain ニューロンデータベース
Flybrain
ショウジョウバエ脳の既知神経と投射パターンデータベース
Flybrain オンライン・アトラス
Flybrain
ショウジョウバエ脳神経系の解剖学的画像データベース
色覚バリアフリー
色覚バリアフリー
色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法
 

東京大学
東大ロゴ
分子細胞生物学研究所
IMCBロゴ
研究紹介 > 神経回路のラベル法1

神経回路の構造を研究するには、膨大な数の脳細胞のうちのごく一部だけを染め出して可視化することが不可欠です。本研究室では、以下に示す強力な手法を使って、脳細胞を数千種類のパターンに染め分け、その構造を詳しく解析しています。

基本編

エンハンサートラップ系統を用いた神経細胞の特異的可視化


 エンハンサーは遺伝子の前後やイントロンの中などに位置し、付近の DNA 領域の転写されやすさを調節するDNA領域です。ショウジョウバエのゲノムには少なくとも数千以上のエンハンサーがあり、それぞれ細胞によって異なった活性を持っています。
 ショウジョウバエには「P因子」という動く遺伝子(トランスポゾン)の一種が古くから知られており、P転移酵素の遺伝子を持つ特殊な系統のハエと掛け合わせることで、この因子をゲノム内でジャンプさせることができます。酵母から取った転写調節因子である GAL4 の遺伝子をこのP因子に組み込んで、掛け合わせによってゲノム内でジャンプさせると、ゲノム内のさまざまな位置に GAL4 が挿入された「エンハンサートラップ系統」を、大量に作成することができます。
 それぞれのエンハンサートラップ系統では、GAL4 遺伝子が挿入位置の近くにあるエンハンサーが活性を持つ細胞のみで、特異的に発現し、GAL4タンパクが作られます。

 GAL4 タンパクは、UAS と呼ばれる DNA 配列に連なる遺伝子の発現を誘導する転写調節因子です。GFP(クラゲ蛍光色素)などの遺伝子を UAS につなげた組み替え DNA を持つハエをGAL4 系統と掛け合わせると、次世代の個体では、GAL4 が発現している細胞のみで GFP などが 発現し、その細胞の位置や形態を調べることができます。(このように細胞の形態を可視化するのに使う遺伝子を、レポーター遺伝子と言います。)

いくらショウジョウバエでは掛け合わせが簡単だといっても、何百何千のエンハンサートラップ系統の作成は大変です。そこで日本の9つの研究室でコンソーシアムを作り、2000年までに4,000以上のエンハンサートラップ系統を作成・公開しました。これは同種のものでは世界最大のコレクションです。

作成した系統はストックセンターに寄贈すると同時に、温度19℃、湿度55%に保たれた分子細胞生物学研究所の飼育室で、維持管理しています。

4,000のGAL4エンハンサートラップ系統の中のどの系統で、脳のどの神経細胞でGAL4が発現しているかを調べるために、それぞれの系統をレポーター遺伝子GFPを持つ系統と掛け合わせ、次世代の個体の頭部を解剖します。

上がショウジョウバエの体全体。下の白っぽい半透明のものが、取り出した中枢神経系です。
 先端の膨らんだ部分(図の左側)が、頭部に納まっている脳です。そこから非常に細い頸部を挟んで、胴体にある腹髄(哺乳類の脊髄にあたる)につながっています。

取りだした脳をスライドグラスにセットします。中央にある白い小さな点が脳です。ショウジョウバエの脳は横幅が約500ミクロン、奥行きが約200ミクロンと非常に小さいので、スライドグラスとカバーグラスの間に0.2ミリ厚のビニールテープを挟むと、潰れることなく長期間保持できます。

大量の系統の脳標本を効率よく撮影するため、横河電機の共焦点レーザー走査顕微鏡(CSU10)を使って脳を断層撮影します。この顕微鏡は画質は比較的低いかわり、未固定の標本でも短時間で短時間で共焦点撮影することができます。

各系統について、脳の前から、後ろから、上から、下からの4方向から断層撮影します。成虫の脳と幼虫の脳を合わせて、4,000のGAL4エンハンサートラップ系統について合計で20万枚の画像のデータベースがサーバーに記録されていて、研究室内のLANから自由にアクセスできます。
 作成に5年間を費やしたこのデータベースにアクセスすることで、自分が解析したい細胞が4,000の系統の中のどの系統でラベルされているかを検索することができます。

こうしてそれぞれの研究目的に対して有用な系統を選んだら、その系統を用いて蛍光色素GFPや、さらに他の様々な細胞可視化のための遺伝子を発現させ、脳標本を作製します。ツァイス社の共焦点レーザー走査顕微鏡で精密に撮影します。この顕微鏡は横河のものより標本の準備や撮影に時間はかかりますが、より高画質の連続断層撮影像を得ることができます。
 本研究室では、微細なGFP蛍光を安定して取得するため、標準の約3倍に出力を上げた強力レーザーを搭載した特注タイプのレーザー顕微鏡を使っています。現在、標準型1台、特注型3台の合計4台が稼働しています。横河の共焦点顕微鏡2台と合わせ、合計6台もの共焦点顕微鏡を揃えている研究室は、世界でもほとんどありません。

得られた連続断層撮影像のデータは、画像ワークステーションで精密に三次元解析します。画像解析ソフトはシリコングラフィクス、マッキントッシュ、ウィンドウズなど様々なプラットフォームのものを、目的に応じて使い分けています。

仮想空間の中で脳を自由に回転させ、いろいろな断面で切ってみて、構造を研究します。
(写真をクリックすると拡大します。左目に赤、右目に緑か青のステレオメガネをかけると立体に見えます。)
 上段は、視覚系の低次感覚野である視葉と脳本体を結ぶ様々な神経回路がラベルされています。下段は、特定の種類のグリア細胞のみをラベルしたもので、神経の細胞体が集まった部分が可視化され、神経線維やシナプスが集まった部分が黒く抜けています。)

このページの作成・管理は:itokei@iam.u-tokyo.ac.jp