研究室ホームページ Jfly Flybrain 色覚バリアフリー
トップ
 
研究紹介
バックグラウンド
ギャラリー
アクセス
Jfly ホームページ
Jfly
ショウジョウバエ研究者を対象にしたデータベース
Jfly メーリングリスト

ショウジョウバエ研究者の情報交換と議論のためのメーリングリスト
Flybrain ニューロンデータベース
Flybrain
ショウジョウバエ脳の既知神経と投射パターンデータベース
Flybrain オンライン・アトラス
Flybrain
ショウジョウバエ脳神経系の解剖学的画像データベース
色覚バリアフリー
色覚バリアフリー
色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法
 

東京大学
東大ロゴ
分子細胞生物学研究所
IMCBロゴ

脳の神経回路の全ての構造を解析する「コネクトミクス」研究が、現在世界中で盛んになっています。ヒト、サル、マウス等でも研究が進められていますが、これらの生物の脳はサイズも細胞数も大きすぎ、現在の技術では脳の全ての神経とそれらの間の結合様式を同定するのは、非現実的です。ゲノムプロジェクトや遺伝子工学の成果を駆使できるモデル動物キイロショウジョウバエは、摂食・求愛・闘争・学習記憶など脊椎動物に劣らない精巧複雑な行動レパートリーを持つわりに、脳のサイズや細胞数が小さく、神経回路構造と情報処理の全体像が解明できる有望なモデル系として着目されています。私たちはコネクトミクス研究が流行するよりずっと前から、この実験動物の脳回路の構造・機能・発生過程の全貌を体系的に解析し、基盤となる研究情報を提供しています。

入試情報
・ニュース

    (ヒトの色覚に関する研究は こちら をご覧ください。)
  • ハワードヒューズ・ジャネリア研究所のシニアフェローに着任しました。(2015.1月)
    ハワードヒューズ医学財団が設立したジャネリア・リサーチキャンパス(米国ワシントンDC)は、マウスとショウジョウバエの脳神経研究を大規模に行う世界有数の研究機関です。米国籍やグリーンカードを持たない外国人としては初めて、同研究所のシニアフェローに着任しました。あわせて同研究所にサブの研究グループを立ち上げ、従来解析が進んでいない脳領域の神経回路構造を詳しく研究します。

  • 昆虫脳の脳構造を定義する枠組みを完成しました。(2014.2月)
    日・独・米・英の15研究室からなる国際チームを率いて、今後の昆虫脳研究の共通基盤となる「すべての脳構造を定義する体系の枠組み」を作成し、公表しました。 これまで脳の構造の名前や 境界の定義にあったばらつきや混乱、定義が未整備な場所の問題を解決し、脳の全域について「曖昧さのない住所の枠組み」を確立しました。この枠組みはすでに各国の大規模脳データベースで用いられています。

  • 昆虫脳の神経回路の基本構造を解明しました。(2013.4月)
    脳の細胞を作る神経幹細胞の1つとそれが作る子孫細胞を染め出す実験を繰り返し、約100個ある神経幹細胞から作られる子孫細胞群のほとんどを同定しました。子孫細胞群は、出自ごとに脳内の決まった場所だけに神経突起の枝を伸ばす「クローナルユニット」を形成し、このユニットがブロックのように組み合わさって、脳全体の神経回路を作っていることが分かりました。神経回路の詳しい構造はこれまでごく単純な線虫でしか分かっていませんでしたが、今回の研究で、ショウジョウバエ脳の全ての場所について、どのユニットがどこに投射し、どのような神経回路構造を作っているかを解明し、複雑な脳構造を持つ生物の神経回路の全体構造を始めて明らかにしました。  

  • 脳科学研究戦略推進プログラムの研究を開始しました。(2012.1月)
    文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムによる「脳科学研究を支える体系的・集約的な情報基盤の構築」の一員として研究を開始しました。脳の機能を制御する神経作用の基板を研究します。

  • 染色体のヒストン構造の変化による感覚神経の分化メカニズムの論文が掲載されました。(2011.12月)
    Endo K, Karim MR, Taniguchi H, Krejci A, Kinameri E, Siebert M, Ito K, Bray SJ, Moore AW. Chromatin modification of Notch targets in olfactory receptor neuron diversification. Nat Neurosci, 15, 224-33
    - プレスリリース -
     ショウジョウバエの嗅覚系では1つの前駆細胞から複数の分裂を経て最大4種類の嗅覚感覚細胞が形成されますが、そのメカニズムはよく分かっていませんでした。今回の研究で、細胞間相互作用によって遺伝子の発現を調節するNotchシグナルが細胞分裂のたびに繰り返し活性化していることを発見するとともに、核内因子HamletがNotchシグナル標的遺伝子の発現を分化過程の進行に応じてダイナミックに調節することで、同じNotchシグナルが繰り返し使われるにもかかわらず、分裂ごとにそれぞれ異なる細胞運命を生み出している可能性を示しました。さらに、そのメカニズムは、クロマチン構造の変化によって遺伝子発現を制御する“エピジェネティクス”によることを明らかにしました。これまでエピジェネティクスは、一度確立された遺伝子発現状態をその後の細胞分裂を通じて維持する「細胞記憶」のようなものとして考えられてきましたが、今回の研究で、エピジェネティクスが細胞分化の過程で分裂ごとにダイナミックに行われ、神経細胞の最終分化に深く関わっていることを示しました。

  • ショウジョウバエの既知の神経を網羅したデータベースを公開しました。(2011.4月)
    Shinomiya, K., Matsuda, K., Oishi, T., Otsuna, H., and Ito, K. Flybrain Neuron Database, a comprehensive database system of the Drosophila brain neurons. J Comp Neurol, 519, 807-33
     ショウジョウバエの脳ではこれまで数百種類の神経が同定され、構造や機能が解析されています。しかしそれらはさまざまな論文にばらばらに発表されていて、全貌を知ることは困難でした。このデータベースでは既知のほとんどの神経の情報を統一した様式で閲覧できる「ニューロンデータベース」と、さまざまな抗体や発現誘導系等による脳のラベルパターンを提供する「系統/抗体データベース」、さらに脳のさまざまな断面をインタラクティブに眺めることができる「ブレインエクスプローラー」を提供して、ショウジョウバエ脳を解析するさまざまな研究者をサポートします。

  • JST戦略の研究を開始しました。(2010.10月)
    科学技術振興機構戦略的創造研究研究推進事業CRESTによる「感覚情報を統合する高次神経の回路構造と機能のシステム解析」という研究を開始しました。感覚の低次中枢と行動制御を司る中枢の間を結ぶ、高次の感覚情報処理の研究を推進します。

  • ショウジョウバエの味覚中枢の詳細な構造に関する論文が掲載されました。(2010.10月)
    Miyazaki, T. and Ito, K. Neural architecture of the primary gustatory center of Drosophila melanogaster visualized with GAL4 and LexA enhancer-trap systems. J Comp Neurol 518, 4147-4181, 2010.
     当研究室ではこれまで視覚・嗅覚・聴覚の感覚中枢の詳細な構造を解析してきましたが、これに引き続き、残る重要な感覚情報処理機構の1つである味覚中枢の詳細な解析を行いました。哺乳類の味覚系では口の味覚感覚細胞は直接脳に投射せず、味覚神経を介して間接的に投射するため、それぞれの味の情報を処理する部位が脳の中枢でどのように配置されていることを調べるのは困難です。昆虫では口の味覚感覚神経が脳に直接投射するため、味覚中枢における感覚マップを作ることが原理的には可能です。しかし視覚中枢や嗅覚中枢と異なり、味覚中枢は複雑な構造をしているため、これまできちんとしたマップを作るのは困難でした。そこで GAL4 と LexA という2種類の発現誘導系を組み合わせて様々な味覚神経の投射を詳細に比較して、初の体系的感覚マップを構築しました。その結果、甘みと水の情報は一次中枢の同じ場所に送られる、甘み・水/苦み/炭酸の3つの情報はそれぞれ異なる場所に送られる、味覚情報と「口が対象物に接触した」ことを示す触覚情報は隣接するが異なる場所に送られる、といった味覚情報処理の基本構造が分かりました。

  • ショウジョウバエの音・重力・風の検知システムに関する論文が掲載されました。(2009.3月)
    ショウジョウバエの重力感覚と聴覚の神経基盤
    Kamikouchi, A., Inagaki, H. K., Effertz, T., Fiala, A., Hendrich, O., Gopfert, M. C. and Ito, K. - Nature (Article) (458) 165-171, 2009.
    ショウジョウバエ脳での風と近接音との異なる感覚表現
    Yorozu, S., Wong, A., Fischer, B. J., Dankert, H., Kernan, M. J., Kamikouchi, A., Ito, K., Anderson, D.J. - Nature (Letter) (458) 201-205, 2009.
    上へ下へと飛び回る by Ruth Anne Eatock - Nature (News and Views) (458) 156-157, 2009
     人間は音と重力を内耳にある感覚細胞で検知していますが、昆虫がこれらの情報を処理する仕組みはほとんど分かっていませんでした。人間の耳に当たると推定されている触角付け根の「ジョンストン器官」にある様々な感覚細胞で特異的に任意の遺伝子を発現させる方法を以前の研究で確立したので(参照)、これを利用して特定の感覚細胞の活動をモニターし、その細胞の機能を特異的に遮断する実験を行いました。その結果、ジョンストン器官には触角の振動と変位を検知する2種類の細胞があり、それぞれの機能を遮断すると音と重力への反応が特異的に失われることを見出しました。音検知と重力検知の感覚神経は脳の別々の感覚中枢に情報を伝え、これらの中枢の神経回路は人間の脳の聴覚や重力感覚の中枢とよく似た構造になっていました。また、風は重力と同じように触角の角度を変化させますが、このような風検知も重力と同じ脳中枢で処理されていることが分かりました。
     これまで視覚・嗅覚・味覚について哺乳類と昆虫の情報処理の類似性が知られていましたが、今回の研究で聴覚や重力感覚についても、高い類似性が明らかになりました。6億年以上前に分かれて独立に進化してきたにもかかわらずよく似た情報処理システムを獲得した哺乳類とハエの脳構造を比較することで、私たちの脳を広い視野から、より深く理解し、特定の情報処理に最適化された神経回路の設計原理の理解が加速することが期待されます。人間の脳とハエの脳の意外な類似点を見出した研究であるため、各方面で報道されました。NHK ニュース朝日毎日読売日経共同通信 等)
    ショウジョウバエの音や風への反応のムービープレスリリースのPDF


  • ハエの触角葉の抑制性神経回路の構造に関する論文が掲載されました。(2009.3月)
    “ショウジョウバエ触角葉におけるGABAによる神経接続”
    Okada, R., Awasaki, T. and Ito, K. - J Comp Neurol, 514:74-91
     ガンマアミノ酪酸(GABA)は抑制性神経接続を担うもっとも重要な伝達物質です。GABAを産生する神経細胞については詳しく調べられてきましたが、その信号をどのような神経が受け取るのかについては、解析が進んでいませんでした。そこで一部の神経細胞だけをラベルする手法とGABAの産生酵素や様々な受容体の遺伝子をin situハイブリダイゼーションで同定する方法を組み合わせ、触角葉のなかでどの神経がGABA信号を発信し、どの神経がそれを受容するのかを、様々な種類の局所神経と投射神経について体系的に明らかにしました。

  • 神経のプログラム細胞死に対するグリアの新しい機能に関する論文が掲載されました。(2009.1月)
    “神経細胞死はショウジョウバエ成虫脳のグリア増殖を惹き起こす”
    Kato K, Awasaki T, Ito K. - Development. 136:51-59, 2009.
     これまでの研究でグリア細胞が神経回路の形成過程で主導的な役割を果たすことを示してきましたが、神経発生終了後の成体脳においても、グリアが重要な役割を演じていることが分かりました。羽化直後の成虫では神経のプログラム細胞死が起こりますが、これに呼応して一部のグリア細胞が増殖していることを発見し、このグリア増殖がプログラム細胞死だけでなく、事故による神経損傷によっても生じること、両者はともに、従来は細胞死関連遺伝子として知られていたeiger遺伝子による制御を受けていることを示しました。 グリア増殖を阻害すると過剰な神経細胞死が起こるので、このグリア増殖は細胞死による影響をシールドする役割があると推定されます。しかもこのようなグリア機能は、2ヶ月にわたるショウジョウバエの寿命のうち最初の1週間に限られており、成虫期がグリアの活動性によって2つの時期に分けられることを示しました。

  • ハエのキノコ体の内部構造と内部と外部を結ぶ神経群に関する論文が掲載されました。(2008.3月)
    Neuronal assemblies of the Drosophila mushroom body
    Nobuaki K. Tanaka, Hiromu Tanimoto, Kei Ito - J Comp Neurol (508) 711-755, 2008.
     ショウジョウバエのキノコ体は学習・記憶の研究に広く利用されていますが、その内部で様々な神経が構成しているはずの回路構造の詳細は、これまできちんと解析されていませんでした。6年がかりの研究によって、キノコ体を構成する主要神経であるKenyon神経だけでなく、それ以外の内部神経、さらにキノコ体の内部と外部を接続する神経について、新たに同定した多数の神経種を含む、包括的な投射マップを作成しました。この結果、キノコ体の内部には層状に投射する内部神経とセグメント状に投射する外部神経によって、多数のマトリクス状の小部位が形成されていることが分かりました。

  • ハエの脳の発生に関する教科書を出しました。(2008.3月)
    “Brain development in Drosophila melanogaster”
     (Landes Bioscience/Springer)
     ショウジョウバエの脳の発生に関する教科書はこれまで少なかったのですが、何人かの研究者と協同して作成しました。この分野をカバーする本としては約15年ぶりになります。我々は、当研究室が発見した細胞系譜に由来する脳内のクローン回路構造についての章を担当しています。(“Clonal unit architecture of the adult fly brain.” Ito K and Awasaki T)

  • 嗅覚処理細胞の可塑性に関する論文が掲載されました。(2007.12月)
    “嗅覚回路における活性依存的な可塑性”
    Sachse S, Rueckert E, Keller A, Okada R, Tanaka NK, Ito K, Vosshall LB. - Neuron (56) 838-50, 2007. (MedLine)
     嗅覚情報の一次処理中枢である触角葉の細胞が二酸化炭素濃度の変化に対して可塑的に応答することを示しました。

  • 視覚認知のメカニズムに関する論文が掲載されました。(2007.10月)
    “ショウジョウバエ視覚系における動き検出チャンネルの解析”
    Rister J, Pauls D, Schnell B, Ting CY, Lee CH, Sinakevitch I, Morante J, Strausfeld NJ, Ito K, Heisenberg M. - Neuron (56) 155-70, 2007. (MedLine)
     視覚系の第一段階にあたる lamina に存在する様々な種類の神経のうち、代表的な2種類であるL1, L2神経が視野の動きの検出に不可欠で、しかもその二種だけでほぼ十分であることを示しました。(この研究は、当研究室で必要なショウジョウバエ系統を探索・解析し、ドイツの研究室で視覚行動実験を行うことで完成しました。)

  • 嗅覚神経系の細胞分化/回路形成に関する論文が掲載されました。(2007.2月)
    “Notchシグナルによるショウジョウバエの嗅覚神経細胞分化と神経回路構築”
    遠藤啓太、青木智子、依田有香、木村賢一、浜千尋 - Nature Neuroscience (10) 153-160, 2007. (MedLine)
     ショウジョウバエの嗅覚神経系には嗅覚神経細胞が約50種類存在しており、それぞれ異なる匂い物質を感じることができます。この50種類の細胞が、それぞれ脳の嗅覚中枢の異なる領域に軸索を投射することで、嗅覚中枢内に匂い感覚地図が構築されています。今まで、嗅覚神経細胞がどのように50種類にも分化し、さらに、それぞれがどのように嗅覚中枢内の特異的な領域へ軸索を投射するかは全くわかっていませんでした。この論文では、一つの母細胞から作られた複数の嗅覚神経細胞が、Notchという膜リセプターを起点とした細胞内シグナル系の活性化/不活性化の違いによって二種類に分化し、さらにこの分化状態の違いに対応して、軸索を投射する嗅覚中枢内の領域も二種類に区分されることを示しました。これによって、匂い感覚地図を遺伝情報にしたがって脳内に構築する分子機構の一端が明らかになったわけです。
    (なお、この研究は遠藤啓太が前任地の理化学研究所・発生/再生科学総合研究センター・神経回路発生研究チームで行なった研究に、当研究室で行なった母細胞からの細胞系譜解析の結果を加えることで完成しました。)

  • 聴覚情報処理に関する論文が掲載されました。(2006.9月)
    “ショウジョウバエの脳における聴感覚神経投射の包括的な分類”
    上川内あづさ、島田尚、伊藤啓 - Journal of Comparative Neurololgy (499) 317-356, 2006. (MedLine)
     ショウジョウバエの雄は雌に対して羽音を使って求愛し、音を介した個体間コミュニケーションや脳における聴覚情報処理を研究する上で興味深い材料です。しかし、音情報を処理する神経回路構造はほとんど分かっていません。ハエの聴覚器官は触角に存在し、ジョンストン器官と呼ばれています。この論文では、ジョンストン器官から脳へ投射する聴感覚神経が構成する回路構造を体系的に解析しました。その結果、脳の一次聴覚野の内部は少なくとも5つのゾーンに分かれており、ジョンストン器官に約500個ある聴感覚神経の軸索は、それぞれ5つのゾーンのどれか1つのみに投射しているのを発見しました。さらに、各ゾーンに投射する聴感覚神経の細胞体は、行き先である各ゾーンに応じて聴覚器官内部でそれぞれ特定の位置に配置していることが分かりました。これによって、聴覚においても、視覚、嗅覚、味覚など他の感覚と同様に、感覚器官と脳の一次中枢との間に厳密な相関地図があることが分かりました。
     
  • 視覚情報処理に関する論文が掲載されました。(2006.7月)
    “ショウジョウバエ低次視覚中枢と脳の高次中枢を結ぶ視覚投射神経の体系的解析1:lobula 特異的経路”
    大綱英生、伊藤啓 - Journal of Comparative Neurololgy (497) 928-958, 2006. (MedLine)
     視覚情報の低次中枢内部の神経回路構造に比べ、低次中枢と高次中枢を結ぶ神経回路の構造は、知見が非常に限られています。そこでショウジョウバエの低次視覚中枢である視葉と、高次中枢が集積する脳本体との間を結ぶ視覚投射神経を、体系的に同定解析しました。まず投射先の領域を厳密に区別する「住所」を定義するため、グリアによる仕切り構造や容易に同定可能な脳構造を指標にして、脳本体を細かな領域に分割するマップを定義しました。さらに、視葉と脳本体を結ぶ視覚投射神経を合計44種類同定し、この論文ではそのうちlobulaと呼ばれる領域に特異的に由来する14経路について、まず報告しました。この結果、低次中枢における投射形態と、高次中枢における投射標的や、両中枢の間を情報が流れる向きに、特徴的な相関があることが分かりました。
     
  • 神経回路の再編成のメカニズムに関する続報が掲載されました。(2006.6月)
    “ショウジョウバエ変態期における軸索プルーニングにはアポトーシス細胞貪食遺伝子drprとced-6が必須である”
    粟崎健、巽良子、高橋邦明、荒井國三、中西義信、上田龍、伊藤啓 - Neuron (50) 855-867, 2006. (MedLine)
     神経回路を正常な状態に維持するためには、不必要になった神経線維を速やかに取り除き、修復することが必要です。前回の論文で、これまで注目されていなかったグリア細胞がこの機構に中心的な働きをすることを明らかにしましたが、除去すべき神経線維をグリアがどのようにして認識しているかの分子メカニズムは不明でした。
     今回の研究では、まず、線虫においてプログラム細胞死(アポトーシス)を起こした細胞を食細胞が貪食する際に必要な、スカベンジャー受容体分子の遺伝子draper (drpr) とアダプター分子の遺伝子 ced-6 が、蛹初期にショウジョウバエのキノコ体神経線維の一部が選択的に貪食される際に特定のグリア細胞で一時的に強く発現していることを見つけました。RNA干渉法やdrpr突然変異体を利用して、これらの遺伝子の機能を阻害したところ、グリアによる神経の貪食作用が抑制され、キノコ体神経線維は除去されなくなりました。一方、グリア細胞の貪食作用とは独立に、キノコ体神経線維はエクダイソンを受容して、微小管細胞骨格の崩壊という変性現象が誘導されていました。この研究で、プログラム細胞死を起こして死んだ細胞の除去だけでなく、生きている神経細胞の一部である変性神経線維のグリアによる除去にも、同じ分子機構が使われているという新しい概念が提唱されました。

  • 視覚学習のメカニズムに関する研究に協力しました。(2006.2月)
    “ショウジョウバエ脳における二種の視覚特徴の別個な記憶”
    Liu G, Seiler H, Wen A, Zars T, Ito K, Wolf R, Heisenberg M, Liu L. - Nature (Article) (439) 546-548, 2006. (MedLine)
     図形の大きさや色、上下方向の位置、輪郭の傾きといった様々な断片的視覚情報をハエに掲示して学習実験を行った結果、中心複合体の一部である扇状体領域の特定の層に投射する2群のニューロンが、特定の視覚パラメーターの記憶に深く関与していることが分かりました。

連絡先
〒113-0032
東京都文京区弥生 1-1-1
東京大学分子細胞生物学研究所
高次構造研究分野
伊藤 啓(准教授)
  phone :03-5841-2435
  email :itokei@iam.u-tokyo.ac.jp

本研究室では以下のサイトの運営も行なっています。

Jfly ホームページ
ショウジョウバエ研究者を対象にしたデータベース。ハエや昆虫の研究に関連したノウハウや系統リストなどの情報・文書を、日本語のものを中心に蒐集・公開。

Jfly メーリングリスト
日本語を話せるショウジョウバエ研究者の、情報交換と討議のためのメーリングリスト。参加希望者は伊藤までご連絡下さい。

Flybrain オンライン・アトラス
ショウジョウバエの後期胚から成虫を対象にした脳神経系の解剖学的画像データベース。米独日の国際共同プロジェクトで、銀染色やゴルジ染色によるアトラスと各種分子マーカーによる染色像と解説を提供。

色覚バリアフリー
色盲の人にもわかるバリアフリープレゼンテーション法
黄色人男性の5%、白人男性の8%を占める赤緑色盲や、老化に伴って急増する白内障の人にも見やすい論文図版・学会発表のノウハウを提供。各種メーカーの色を用いた表示のデザインや、公共施設の配色デザインなどにも協力。


このページの作成・管理は:itokei@iam.u-tokyo.ac.jp