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ハエにつくダニとその対策
写真をクリックすると大きな写真が表示されます。
                   2007.12 和多田正義・布山喜章・伊藤啓

【お願い】ハエにとってより危険な、赤や茶色の小さいダニの写真を探しています。もしお持ちの方は、itokei@iam.u-tokyo.ac.jp までぜひお知らせ下さい。

コナダニ 左方に大型の個体、右方に数匹の小型の個体。おそらくTyrophagus putrescentiae ?
 
コナダニ 拡大図

コナダニ 左下方にハエの蛹、右上方にダニ。おそらくHistostoma laboratorium ?
 
コナダニ エサの近くにいる大型と小型の個体

コナダニ (ステレオ写真) 160倍 (赤緑メガネで立体に見える)
 
参考:ショウジョウバエ成虫 (ステレオ写真) 36倍 (赤緑メガネで立体に見える)

 コナダニはハエそのものには寄生しないが、ハエのエサに大発生すると弱い系統に大きな打撃を与える。盛んに摂食、産卵するステージは上の写真のように体の色が白く、丸い形をしており、エサの近くや蛹の周囲、栓のまわりなどにいる場合が多い。バイアルの側壁にエサが付いていると、そのまわりに集まっていることもある。
 条件が悪くなると茶色で、小型かつ平べったい hypopus と呼ばれるステージに変態する。hypopus は摂食も産卵もせず、ひたすら移動しようとする。栓のまわりに集まってくるのはこのためである。このステージは乾燥にも強く、殺ダニ剤もほとんど効かないので厄介である。
 より小型のトゲダニの仲間 Proctolaelaps は、ショウジョウバエの卵を食べるのでさらに脅威である。
 左中央の写真や、参考写真のハエと倍率を比較しても分かるとおり、ダニはハエよりもはるかに小さく、雌雄の仕分けに使う通常の実体顕微鏡では、最大倍率にしてもごく小さくしか見えない。このため、よほど大量に発生しないかぎり目につきにくいことも拡散を防ぎにくい原因である。ダニのチェックをする際は目を皿のようにして調べることが必要である。

【ダニの拡散を防ぐ工夫】
●ダニが透過しにくい栓を用いる。
 ダニはスポンジ栓の隙間を容易に通過して、隣接するバイアルに移動する。ダニに関しては、スポンジ栓は素通しであると考えた方がよい。ダニが拡散しにくいバイアルには、以下のようなものがある。
・綿栓 :綿をそのまま強く圧縮して栓にする。ダニが一番通りにくいと言われているが、綿の扱いがめんどうで、ゆるく詰めたのでは効果がない。また、使い捨てになるのでコスト面が課題である。
・レーヨンボール :木綿のかわりに合成繊維を使った綿栓。
・木綿で包んだ綿栓 :綿を強く圧縮して、さらし木綿で包む。取り扱いがしやすく、洗って再利用も可能である。ただし、ダニの透過を完全には防げない可能性もある。綿栓の表面に出来たシワの隙間からダニが移動することが多いので、綿を包むときにシワのない栓を作ることが非常に大切である。
・ステリプラグ :紙を丸くロール上に固めて栓にしたもの。ドイツ製で、フナコシが扱っている。固くてしっかりしているので綿栓より扱いやすいが、小バイアル用で1つ10円強、中バイアルだとその2倍と高価なのにもかかわらず、使い捨てになるのでコスト面が課題である。スポンジ栓よりはるかに目が細かいが、微小なダニは通過する可能性もある。

●栓の使い回しに気をつける。
 ダニがいるバイアルに使っていた栓には、内部にまでダニがひそんでいる可能性が高い。栓は使い捨てにするのが一番安心だが、コストや廃棄物への配慮から洗浄して再利用する場合は、通常の洗濯と乾燥だけではダニは死滅しない。(洗濯ネットに入れたスポンジ栓を家庭用洗濯物乾燥機で2時間加熱しても、中心部はほとんど熱くならない。)
 そのため、まだハエを入れていない、エサだけの新品のバイアルにも、栓を媒介にしてダニが増えてくることがある。ダニが完全に死滅するように、綿栓やスポンジ栓は十分乾燥させ、芯までよく加熱しておく。電子レンジで加熱するのも有効である。

●古いバイアルは早めに廃棄する。
 ダニはハエよりも若干ライフサイクルが長いようなので、バイアルを長時間保存するほど増殖してくる。実験が済んだバイアルはなるべく早く廃棄し、不要な古バイアルが飼育室に放置されないように徹底する。

●エサを作る場所、材料や完成したバイアルを保管する場所は清潔に保つ。
 コナダニは本来至るところにおり、ハエでなくエサを食べて増えるものなので、エサを通じて大発生することがある。エサ作りに関係する場所は、ダニが発生しにくいよう清潔に保つ。

●複数のラボでエサや栓を共有する場合は、感染の拡大に注意する。
 エサ作りやバイアル・栓の洗浄を共有施設で行うのは研究の効率を高めるが、1つのラボで大発生したダニが共有施設を介して他のラボに拡散する危険も高まる。ラボ間の情報交換を密にするとともに、1つのラボから出てきた古バイアルにいたダニが他のラボで使われる新しいエサやバイアルに感染しないよう、調理施設やバイアル・栓の洗浄方法のシステムをよく工夫する必要がある。(新品のバイアル・栓・エサだけを共有して、共有施設から各ラボへの流れを一方通行にするのがもっとも確実である。)

【他のラボやストックセンターからハエを受け入れるときの注意】
●外来のハエは出所を問わず、すべて十分な検疫をしてからメインストックに入れる。
 受け入れたハエにダニに関する注意書きがあってもなくても、ダニがいるものと仮定して、必ず検疫処理をする。

●外来ハエの受け入れ処理は、学生やポスドクが個々に行わず、信頼のおけるテクニシャンかスタッフが統一して行う。
 学生・ポスドクを問わず、ハエをもらった当人は、もらったハエを早く実験に使いたかったり、自分自身がダニで困った経験を持たずに苦労を想像できなかったりで、つい判断が甘くなりがちである。そのため、「たぶん大丈夫だろうと思って甘いチェックで済ませてしまった」結果として、ダニが拡散することが多い。受け入れたハエを使う実験に利害関係を持たない、別の人が処理することが、判断を確実にする。

●可能なかぎり、単にチェックするだけでなく、卵をダニ洗いする。
 ダニの検疫(quarantine)では、しばらくハエを隔離して飼っておいて、バイアルをよくチェックするが一般的だが、小さいダニを見つけるのはコツが要るので見逃す危険があるのと、ダニを見たことがない人はどういう物体を探したらよいのか自体が分からないという問題もある。そのため、ダニの有無にかかわらず卵を洗うのが確実である。
 ダニの洗い方は、
   J_Fighting_Against_Mites.pdf 卵洗いによるダニの駆除法(最上:日本語)
を参照。

●スクリーニングなどで大量に受け入れるときは、専用のインキュベーターを用意し、できれば部屋も分ける。使うエサも別々に保存しておく。
 ダニがいる可能性があるスペースと、いないはずのスペースを完全にわけ、ダニがいる可能性があるスペースで作業した手で、メインストック用のエサやハエに触らないようにする。

●検疫をしっかりやっているからといって安心しない。
 いくら検疫処理をしっかりやっていても見逃しは起こりえるし、外来のハエ以外の、エサの原料や研究室に立ち入る人自体から出てきたダニが増えることもある。(コナダニはショウジョウバエに特異的な寄生生物ではない。)ダニフリーになっている研究室ほど、つい安心してメインストックのハエのチェックはおろそかになっていることがあるので、気づいたら大発生していることも起こりうる。常に注意することが必要である。

【他のラボにハエを発送するときの注意】
●自分のラボにダニが出ているときは、ハエを他のラボに送るときに必ず相手にその点を告げて、注意を喚起する。
 ダニがいるかもしれないのにそれを告げずに(悪く言えば隠して)相手にハエを送るのは、相手からの信頼を裏切ることにもなりかねない。当該系統でダニを確認したことがあるかどうかにかかわらず、発送時のメールや梱包に同封する文書に、ダニがいる可能性を書いておくことが望ましい。